・日本の子供たちへのメッセージ ・小西流!からだの鍛え方 ・ヒマラヤの自然を守ろう
・不安を抱える現代人へ
2001年ネパールにて
トレーニング
マナスルでパーティーを組む運動生理学の専門家で。 1995 年に小西氏とチョーオユー( 8201m )を登った山本正嘉国際武道大学助教授は、「小西さんの運動機能は、日本人よりは高所に住むシェルパに近い」と言う。
小西さんの体重は 69 キロ、身長は 174 センチと決して大柄ではない。高いところでは酸素摂取量はそれほど変わらないが、体が大きいと筋肉や脂肪がより多くの酸素を必要とするので不利になる。登山家に要求されるのはスピードと耐久力。歩くのが早いという程度のレベルで、それが高いところでも発揮できる力にかかってくる。 100kg の重さを担げるかどうかよりも、 20kg の荷物を背負ってそこそこのスピードで長時間歩けるかどうかが重要になってきます。
人間はもともと自分の足で歩いていたんです。人類の歩く距離が短くなったのはつい最近のことです。私は 17 歳から 28 歳までは一日約 20 キロ走り、以降は高層建築の階段を1日 1,000m 上り下りして鍛えました。家の周辺のマンションは、どこも管理人に目をつけられて、上る階段がなくなってしまいましたよ。
食事では何でもバランスよく食べることに気をつけています。以前は栄養剤をヒマラヤでも日本でも山ほど飲んでいたけれど、今は一切やっていません。遠征中は一ヵ月半は山に入っているのだから、ちゃんとしたコックを雇ってバランスのよい食事を作らせ、高所でも定期的に新鮮な肉や野菜が手に入る環境を作ることが大切です 。
まずは総合体力をつけること。経験を積むことが前提です。その上で言うと、夜間トレーニングも有効でしょう。アタックの時は夜中に出発したり、帰りが夜になったりします。夜を恐れず闇になれて、正確に行動できるようになることが必要です。まずは国内で一晩二晩歩き続ける練習をします。夜に歩き出して、翌々日の朝まで歩くという風にね。なれてきたら食事を摂らないで、緊張を強いられる稜線を歩くなどといった負荷を徐々にかけていきます。
しかし、食事制限のトレーニングも必要です。僕の場合はヒマラヤアタックの時は 5 日くらいはお茶とジュースだけで食事は摂りませんので、断食をしました。 2 週間東京で断食トレーニングをしながら、毎日 1,000m の上り下りとサーキットトレーニングを 3 時間以上やりました。
( Esquire news 2002 年 5 月、 Rock & Snow ‘99 春 より 要約)
心肺機能などの体の基本は 20 代前半で決まり、それ以降はどう維持するか、です。無駄な筋肉をつけず、必要な筋力や体力を守る事がトレーニングの目的。僕はなにより、歩く事をお勧めしますね。散歩じゃなく、「運動」だと意識して。腹筋に力を入れて歩けば、背筋が伸びて気持ちいい。腹に気合が入ると、精神も鍛えられます。まず、きちんと意識を持つ事が、健康維持の基本ですから。
( AMAGRAM 2001 年 6,7月)
会社にお勤めの方は、日中に運動することはなかなかできないでしょうが、運動は明るいうち、できれば午前10時までにするというのが私の持論です。朝の空気はすがすがしいでしょう。人間と同様に、草木も朝起きて、夜寝るんでしょうね。すべての細胞が目覚める朝に身体を動かすのが自然の理に適っていると思います。私の経験から、早起きして1時間くらい歩く方が、夜暗い中でジョギングするよりも身体にはいいのではないかという気がします。